国際展示会セミコンジャパン派遣学生の参加報告を掲載しました。

以下に研究テーマが異なる3名の学生達からの参加報告を抜粋してご紹介します。

中間寛樹さんの参加報告書

2025年12月18日、東京ビッグサイトで開催された Semicon Japan 2025 に参加しました。
会場には国内外から多数の企業や国・地域のパビリオンが出展しており、参加者も日本人だけでなく多くの海外関係者が見られ、世界的な半導体産業への関心の高さを実感しました。

SemiconJapan会場の様子


数多くの展示の中でも特に印象に残ったのは、Rapidusブースと北海道ブースです。
Rapidusは、近年注目を集めている2nm世代ロジック半導体の開発・製造を進めており、その製造拠点が北海道・千歳市に建設される予定です。これにより、北海道における半導体産業への注目と期待が高まっています。
北海道内の高等教育機関では、半導体やデジタル人材育成に向けた取り組みが始まっており、またRapidusをはじめとする企業の製品を道内で消費できるよう、道内外から関連企業の誘致も進んでいるとのことでした。
こうした動きが進展すれば、北海道における半導体の地産地消が実現し、新たな産業拠点としての発展が期待されます。
これまで北海道といえば漁業・農業・観光業のイメージが強かったのですが、今後は半導体・工業地域としての側面も加わる可能性を感じました。
また、北海道は太陽光・風力・中小水力など再生可能エネルギー資源が豊富で、その導入ポテンシャルは国内でも随一とされています。送電や貯蔵の課題は残るものの、今後産業が発展し電力需要が高まる中で、再エネ資源の活用は北海道の大きな強みになると感じました。

会場を回る中で改めて感じたのは、半導体産業が非常に多くの技術・企業の集合体であるという点です。
これまで私は、半導体関連メーカーといえばウェハー製造や洗浄・露光・エッチングなど主要工程に関わる企業という認識しかありませんでした。
しかし今回、装置に使われるソケットメーカー、薬品を製造するプラントエンジニアリング企業、工場設備のパスボックス・エアシャワーメーカーなど、極めて細分化された領域の存在を知り、それらの技術が組み合わさって一つの装置・工場・製品(ウェハー)が完成していることを理解しました。
その精緻な分業体制に深い感銘を受けました。
また、IC部品や電子部品を搬送するためのトレーにおいても、静電気防止や防塵性能を持つ素材が採用されていることを知り、半導体製造における細部への徹底した配慮を感じました。

次世代型パスボックス

企業の方々とのお話の中では、歩留まりの重要性が印象的でした。
近年、高性能化と需要拡大によりウェハー1枚あたりの価値が数百万円に達することもあり、不良チップによる損失が大きくなっています。
そのため、ウェハーメーカーは歩留まり率の向上を最重要課題としており、より高精度な装置を装置メーカーに要求しています。
結果として、洗浄水の純度、ペースト素材の組成、ベルトコンベアの床材に至るまで、工程のあらゆる要素にこだわりが生まれているとのことでした。
こうした細部までのこだわりに強い感銘を受け、半導体という製品の中にロマンを感じました。

振動減衰性がアルミと比べて高いMMC (ベルトコンベアの床材)
はんだの代わりの銀焼結接合材

Rapidus代表取締役社長 兼 CEOの小池氏、および京セラ取締役 須永氏の講演では、学生時代の経験や研究に関するお話を伺いました。
お二人に共通していたのは、「目の前には多くのチャンスがあり、それをチャンスとして捉え、掴みに行けるかが重要である」というメッセージでした。
そのためには、専門分野にとどまらず広い視野を持つことが大切であるとのお話がありました。私は現在、スイッチング電源回路における電磁ノイズを対象に研究を行っていますが、今回のように半導体産業をテーマとするイベントに参加したことは、自身の視野を広げる良い機会であったと感じています。
今後も積極的に新しい分野に触れ、前向きに研究・仕事に取り組んでいきたいと考えます。
Semicon Japan 2025では、半導体産業の広がりと奥深さ、そして多様な技術の結集を直接感じることができました。
今回得た知見と刺激を忘れず、自身の研究意欲をさらに高めるとともに、将来的には発表する側・技術を支える側として貢献できるよう努力を続けていきます。

栗生樹さんの参加報告書

 私は、2025年12月17日~19日に東京ビックサイトにて開催された、SEMICON Japan 2025に参加した。本イベントは半導体を核としつつ、エレクトロニクス業界に関する多種多様な企業・団体が出展し、新製品の展示や今後の事業戦略についての紹介を行う年に1度の大規模な展示会である。今年は、急速な発展を続ける生成AIや、脱炭素社会の実現に向けた次世代パワー半導体、さらには量子コンピュータなどの量子技術に関する展示やセミナーが目立った。以下では、私が見学した3つのブース(ニコン・アドバンテスト・IBM)について、報告を行う。

東京ビックサイト
展示ブース入口の看板


 まず、1つ目は株式会社ニコンである。ニコンは光学機器メーカーとしてカメラや光学顕微鏡などが非常に有名であるが、半導体の分野では半導体露光装置の開発・販売で名高い。近年ではKrFやi線ステッパーでASML社とキヤノンに次ぐ世界シェアを獲得している。最先端の2 nmプロセス半導体の生産では、極短紫外線(EUV)露光装置が必要であるが、パワーデバイスやMEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)のパターン形成には依然として需要があり、ニコンやキヤノンなどの日本企業も存在感を示している。そのような中で、私が興味を持ったのは、パワー半導体向けの結晶欠陥検出装置である。本装置は、SiCのようなパワー半導体の内部の欠陥を3次元的に可視化できる検査装置である。半導体製造プロセスにおいて、様々な段階でテストは行われるため、このような検査装置の重要性は論を俟たない。それ以上に意義があるのは、今後も需要が増大し続けるパワー半導体をターゲットにした検査装置を日本企業が開発した点であると考える。先述のように、露光装置の分野ではASML社による独占に近い状態が続いており、その中でニコンが検査装置にも注力しているのは特筆すべきである。ニコンは伝統的に光学技術に関する極めて深い知見が存在しており、その強みを活かした検査装置開発については、今後も関心を持って動向を注視したいと感じた。

ニコンの展示ブース
結晶欠陥検出装置の説明


 2つ目は、株式会社アドバンテストである。アドバンテストは半導体検査装置の分野で現在は世界シェア50%を超えているグローバルカンパニーである。その存在の大きさは時価総額にも表れており、直近では同じく半導体装置メーカーとして名高い東京エレクトロン株式会社とほとんど等しい15.6兆円という目を見張る数字である。ブースの見学を通して、特に印象的だったのは、パワー半導体向けのテストプラットフォーム「MTe(Make Test easy)」である。本製品は、パワー半導体のテストを高性能かつ低コストでの実施を目的として、複数の装置で役割を分散(分散コンピューティングアーキテクチャー)させたものである。このような方策により、1台のみで構成された検査装置と比較して、並列処理により高速化を実現できている。現在は、様々な現場で人手不足が問題視されているが、本製品のように生産現場の効率化を図れる装置は、ますます求められるのではないかと感じた。

アドバンテストの展示ブース
新型の半導体テスト装置

 3つ目は、IBMである。IBMは100年以上の歴史を持つ世界的なIT企業であるが、今回の展示で特に目を引いたのは、量子コンピュータ「IBM Quantum System Two」の原寸大レプリカである。これまでの0と1というビットで様々なデータを表現する所謂、古典コンピュータに代わって近年世界中で精力的に研究されているのが、量子コンピュータである。量子コンピュータは0と1の量子的な重ね合わせ状態から成る量子ビット(Qubit)を基本単位とし、暗号解読や複雑な分子系のシミュレーションなど多岐にわたる応用が期待されている。量子コンピュータの方式としては、超伝導方式・半導体量子ドット方式・イオントラップ方式などが代表的である。この内、半導体量子ドット方式は微小な半導体中に量子ドットをトラップし、チップの微細化が容易である点で有望視されており、半導体とのつながりも想像できる。一方で、現在主流な超伝導方式は一見すると半導体との関係性が判然としない。しかしながら、量子回路の作製において半導体の微細化加工技術を応用でき、半導体の技術進展が量子コンピュータの性能向上と密接に関係していることが理解できる。さて、今回見学したQuantum System Twoは超伝導方式で、国内では神戸の計算科学研究センター(理研)にのみ導入されいるが、基本的には目にすることができない。そのため、今回のブース見学を通して、実機ではないが非常に精巧な模型を間近で確認できたのは、大変貴重な経験となった。実際に模型を目の当たりにすると、想像以上に大型であり、また近未来を思わせる洗練されたデザインは大変印象的であった。

IBM Quantum System Twoの実寸大レプリカ

 最後に、私が本イベントの参加を通して非常に貴重な経験を得られたのは、半導体人材育成事業によるところが大きく、深謝申し上げる。

M.Uさんの参加報告書

出張の目的
 現在、半導体材料の微細加工に関する基礎的な研究に取り組んでおり、微細加工技術が半導体デバイスや電子機器の製造プロセスの中でどのように位置づけられているのかを理解することを目的として、本イベントに参加した。また、半導体関連企業の事業内容や技術開発の方向性、研究開発と製造現場の関わりについて情報収集を行い、今後の研究活動および将来の進路を検討する上での参考とすることを目的とした。

出張の内容
 会場には半導体材料、製造装置、評価技術などに関わる多数の半導体関連企業の展示ブースが設けられており、各社による技術紹介や事業内容の説明が行われていた。
 また、企業名自体は知っていたものの、従来は半導体分野との関わりを意識していなかった企業についても、新規事業として半導体関連技術の展開を進めている事例が多く見られ、業界の広がりを実感した。
 以下では、会場で撮影した写真とともに、各社の展示内容および説明を通じて得られた情報について述べる。
株式会社SCREENセミコンダクターソリューションズ
 洗浄プロセスやレジスト塗布・現像など、半導体製造における前工程処理を担う装置の開発・製造を行っている企業である。特に洗浄プロセスに関しては、世界トップクラスのシェアを有する製品を展開している。
 ブースでは、同社の洗浄装置に関する紹介資料に加え、装置構造を示した模型が展示されており、実際の装置構成やプロセスの流れについて理解を深めることができた。また、従来の装置に加え、最新のマスクレス露光装置に関する紹介も行われており、同社が新たな技術分野へも展開を進めている姿勢が印象的であった。

Rapidus株式会社
 世界最先端である2 nm世代のロジック半導体の開発・製造を目指し、2022年に設立された企業である。2027年からのロジック半導体量産開始を目標としており、ブースではそれに向けた技術開発の方針や、これまでの開発過程についての紹介が行われていた。

日本アイ・ビー・エム株式会社(日本IBM)
 2 nm世代の半導体チップの開発を世界で初めて報告した企業であり、先述のRapidusと連携しながらロジック半導体技術の研究開発を進めている。
ブースでは、2 nm世代の半導体チップ開発に至るまでの技術的な変遷や研究の歴史について紹介されていた。また、同社は半導体分野で培った高度な技術を基盤として、量子コンピューターの開発にも積極的に取り組んでおり、その研究内容についての展示も行われていた。実際の量子コンピューターの実機展示もあり、最先端技術を研究から実装へと展開している同社の取り組みを具体的に知ることができた。

PwCコンサルティング合同会社
 PwCコンサルティング合同会社は、一般的にはコンサルティングファームとして知られているが、ブースでは「産学官と連携したロボティクス産業の形成」に注力していることが紹介されていた。実演では、犬型ロボットが段差を乗り越えたりジャンプしたりする様子が示されており、ロボティクス技術の実用性や将来性を直感的に理解することができた。半導体そのものの開発に直接関わる企業ではないものの、先端技術と社会実装を結びつける立場から、産業全体を支える役割を担っている点が印象的であった。

得られた知見と今後の活用
 現在、半導体の前工程プロセス開発に関する研究に取り組む中で、洗浄やレジスト成膜などの工程を手作業で行っている。そのため、各工程に多くの時間を要するほか、条件のわずかな違いによってばらつきが生じることもあった。
本イベントを通じて、このように研究段階で開発されたプロセスを、高い再現性を維持したまま大量生産へと展開するための装置を開発している企業が数多く存在することを知り、研究と製造技術の密接な関係性を理解することができた。
また、自身が取り組んでいるプロセス開発が、機械系や電気系など異なる専門分野の技術と融合することで、一つの製品として完成していく点に、半導体産業の面白さと重要性を感じた。
本イベントへの参加を通じて、自身が取り組んでいる基礎的なプロセス研究が、将来的に産業として大きな価値を生み出す可能性を持っていることを再認識した。この経験は、今後の研究活動に対する意欲の向上にもつながった。
所感
 本出張を通じて、半導体産業が材料、プロセス、装置などの各技術と密接に関わりながら発展していることを実感した。現在取り組んでいる基礎研究が、産業全体の中でどのような位置づけにあるのかを考える良い機会となった。今後も、このような産業界の動向に直接触れられる機会には積極的に参加し、研究活動に活かしていきたい。