事業概要

背景

関西には、理工系の学生が多い大きな大学が集まっています。これらの大学は、半導体の研究で世界トップレベルの成果を出していて、企業や自治体と協力した取り組みも進めています。

大阪大学

日本で最も大きな国立大学のひとつで、多くの理工系学生が学んでいます。半導体の研究では、基礎から回路設計まで幅広くカバーし、大きなクリーンルームを持つ数少ない大学です。さらに、110社以上の企業と協働研究所や共同研究講座を設立しており、産学連携のモデルになっています。

京都大学

炭化ケイ素(SiC)という材料を使ったパワー半導体の研究で世界をリードしています。東京エレクトロンやロームなどの大手企業と協力し、研究成果を実用化しています。

神戸大学

回路設計や次世代の光通信技術、微細加工に強みがあります。神戸市や兵庫県と連携し、地域と一体になった取り組みを進めています。また、中国地方との連携も強化しています。

京都工芸繊維大学

クリーンルームを整備し、パワー半導体や光技術、製造技術に力を入れています。回路設計や量子技術の研究も得意で、企業との連携を大学全体で進めています。

大阪公立大学

府立大学と市立大学が合併して誕生した大規模大学で、AIチップやアナログメモリ、パワーデバイスに強みがあります。大阪府や大阪市、産業技術研究所、高専とも連携しています。

問題意識・課題

関西には半導体の研究で世界トップレベルの大学がそろっています。でも、これまでの取り組みは大学ごとにバラバラで、関西全体で力を合わせる仕組みがありませんでした。そのため、せっかくの研究成果を全国や世界に発信しきれていないのが現状です。

一方、北海道や九州では、ラピダスやTSMCといった大企業の進出で半導体産業が盛り上がり、地域全体で協力する体制ができています。関西はまだそのような連携が弱く、「空白地帯」と言われることもあります。さらに、日本の半導体産業は2000年以降に衰退し、大学でも研究者が減り、大きな設備を使った研究が難しい時期が続きました。その結果、半導体を学ぶ環境が十分とは言えません。

でも今、状況は変わっています。AIや電気自動車の普及、そして経済安全保障の観点から、半導体は日本にとってとても重要な技術になっています。産業界では、今後10年間で4万人以上の半導体の専門人材が足りなくなると予測されていて、関西だけでも約4,000人が不足すると言われています。

だからこそ、関西の大学が力を合わせて、半導体を学べる環境を整え、未来の技術を担う人材を育てることが急務なのです。

目標

大阪大学・京都大学・神戸大学・京都工芸繊維大学・大阪公立大学の5つの大学が協力して、半導体を学び、研究できる連携拠点をつくります。これによって、関西から半導体の未来を担う人材を育て、日本の半導体復活を後押しします。

教育内容

半導体業界と連携して、半導体の役割や最先端技術を広く学ぶ実践講座を開設します。

「パワーエレクトロニクス」「回路設計」「フォトニクス」「製造技術」を重点分野として、大学院生向けの発展的な講義を提供します。

各大学のクリーンルームや半導体製造装置や評価装置、回路設計環境を活用し、大学をまたいだ実習体制を整えます。

学生同士の交流

研究発表会や他大学での実習をきっかけに、学生同士がつながり、共同研究へと発展することを期待しています。

企業や地域との連携

大学が持つ産学連携の仕組みをさらに広げ、企業や自治体、業界団体と協力して、最先端技術を学べる実践的な教育を行います。これにより、課題を解決できる力を持った半導体人材を育てます。

高校生や高専生の参加

近隣の高校や高専からインターンシップを受け入れ、未来の半導体人材の育成にも取り組みます。